“実家の売却”で後悔しないために──相続不動産の活用方法と判断基準

相続によって実家を受け継いだものの、「思い入れがあって売る決断ができない」「管理が負担になっているが、どう扱うべきかわからない」と悩む人は少なくありません。近年は空き家問題の拡大や固定資産税の負担、建物の老朽化などにより、相続不動産に関する判断はますます慎重さが求められています。本コラムでは、相続した実家を“売るべきか、活用すべきか”を判断するための基準と、後悔しないための具体的なステップについて解説します。


■1 実家を相続したあと、まず最初に確認すべきこと

相続不動産の扱いを考える前に、以下の3点を必ず確認しましょう。

(1)不動産の名義状況
名義が亡くなった親のままの場合、売却や活用はできません。まずは相続登記を行い、名義を現所有者へ移す必要があります。2024年からは相続登記が義務化されており、放置すると罰則が課される可能性があるため注意が必要です。

(2)不動産の現状と価値
建物の老朽化、シロアリ被害、雨漏りなどの状態、また市場での売却価格や賃貸した場合の相場を調査します。立地によっては解体して土地として売る方が価値が上がることもあります。

(3)相続人全員の意向
兄弟姉妹が複数いる場合、意向のすり合わせが必要不可欠です。「住み続けたい人」「早く売りたい人」「感情的に判断が難しい人」など、立場が異なれば意見が噛み合わないこともあります。トラブル回避のため、早い段階で全員の方向性を確認しておくことが重要です。


■2 実家を「売る」か「活用する」かの判断基準

相続した不動産の扱いは、大きく分けて以下の2つに分類できます。

●売却する場合

次のような人に向いています。

  • 実家に住む予定がない

  • 管理の手間を減らしたい

  • 相続税や固定資産税の負担を軽減したい

  • 相続人同士で公平に資産を分配したい

また、築年数の古い家や地方の空き家は、放置すると損壊のリスクや近隣トラブルにつながるため、早めの売却が得策になるケースも少なくありません。とくに、空き家のまま3年以上放置すると特例が外れ、固定資産税が6倍に跳ね上がる可能性もあるため注意が必要です。

●活用する場合

次のような考えがある人に適しています。

  • 実家を残したい

  • 子ども世代が将来住む可能性がある

  • 収益物件として賃貸に出したい

  • セカンドハウスとして利用したい

活用の方法には「賃貸」「リフォームして居住」「民泊」「トランクルーム化」など多様な選択肢があります。ただしリフォーム費用や管理費用が発生するため、費用対効果を冷静に比較することが必要です。


■3 「売却」を検討する人が知っておきたいポイント

●(1)実家の売却価格は“立地”でほぼ決まる

建物の価値は築20年を超えるとほぼゼロに近くなります。そのため、査定額の多くは土地の価値で決まります。
駅距離、周辺人口、商業施設、将来の都市計画などが査定に強く影響します。

●(2)古い家は「解体したほうが高く売れる」ケースもある

老朽化が激しい建物は解体費用を買主が負担しなければならず、買い手がつかないことがあります。この場合、売主側で解体して更地にすると売却しやすくなることがあります。

●(3)相続人が複数いる場合は「遺産分割協議」が不可欠

売却代金は相続人で分配されるため、分け方を明確に決めておく必要があります。遺産分割協議書がない場合、売却後のトラブルにつながることもあるため注意してください。


■4 「活用」を選ぶ場合に考えるべきこと

●(1)賃貸として運用する場合

家賃収入が得られるメリットがありますが、空室リスクや修繕費、水回りの老朽化などのコストが発生します。
特に築古物件は「設備投資が必要」「入居者が見つかりにくい」などの課題があります。

●(2)リフォームして自分で住む場合

耐震性や断熱性のチェックが重要です。昭和56年以前の建物は旧耐震基準のため、耐震補強が必要になるケースが多くあります。

●(3)売却と活用を組み合わせる方法

土地が広い場合、

  • 一部を売却して資金を得る

  • 残りを賃貸や駐車場として利用する
    など「ハイブリッド型」の活用も可能です。


■5 後悔しないための“最終的な判断プロセス”

最後に、実家の扱いで後悔しないための判断フローを紹介します。

  1. 不動産の現地調査を行う(不動産会社・建築士など)

  2. 価値査定を3社以上に依頼する

  3. 活用した場合と売却した場合の費用と収益を比較する

  4. 相続人全員で話し合い、方向性を合わせる

  5. 専門家(不動産・税理士・司法書士)に相談しリスクを確認する

  6. 総合的に判断し、売却・活用を決定する

感情だけ、または数字だけで判断すると後悔につながりやすいため、両方のバランスをとることが重要です。


■6 まとめ

相続した実家の扱いは、人生の中でも特に悩ましいテーマです。
しかし、不動産の現状を冷静に把握し、売却と活用のメリット・デメリットを比較検討することで、後悔のない選択ができるようになります。また、「とりあえず放置する」という選択がもっともリスクが高いため、できるだけ早く行動することが大切です。

専門家へ相談しながら進めることで、トラブルを避け、実家の価値を最大限に活かすことができるでしょう。

アーカイブ

Contact

さいはん本舗は
中古住宅の買取・販売を通して
地域の成長に貢献します